喫煙者のβ-カロチン過剰摂取に警笛

 

それは、1980年代後半、フィンランドの国立研究所とアメリカの国立ガン研究所が、共同で臨床試験を行ったときのこと。試験は非常に大規模なもので、中年男性で喫煙者・29000人以上の登録者に対し、1日20mg※のβ-カロチン(合成サプリメント)をおよそ6年間にわたり投与する、といった内容でした。

 

その結果、大方の予想に反して、肺ガン発生率が11%上昇、脳血管疾患死亡率が20%上昇してしまったのです。また、喫煙者を対象とした別の臨床実験においても、同様に「肺ガン発生率が上昇」という結果が表れてしまいました。

 

これを受けて、喫煙者によるβ-カロチンの過剰摂取の危険性が、大きく注目されるようになりました。また、アメリカの医師22000人に、β-カロチン50mgとアスピリンを一日おきに、およそ12年間投与する実験も行われたのですが、ガン発生率を上昇させないまでも、ガンを抑制する効果は見られなかったという結果が表れました。

 

これによって、β-カロチンのガン抑制効果は、暗礁へと乗り上げてしまったのです。※β-カロチン1日の推奨摂取量は6mgとされています。しかし、その結果を受けて、すぐに「β-カロチンは摂るべきでない」と決め付けてしまうには、早いでしょう。